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李春光スパイ事件に学ぶ特殊工作の実態

最近、日中の緊張感が高まってきましたが、そんな中、もうちょっと大きく報じられるかと思っていた李春光のスパイ事件、皆さんすっかりお忘れでしょうか。

今回の尖閣問題にしても、マスコミや識者には様々な論調がありますが、これって何処に軸足を置いて話しているのと感じられるものが多々あります。そういうものを考えるとき、このスパイ事件は重要なカギになると思って、改めて掘り起こしたいと思います。

月刊WiLL 8月号で京都大学名誉教授の中西輝政氏が『戦後最大の諜報案件「李春光」』と題して警告を発しています。

この、李春光スパイ事件ですが、「ちっぽけな事件」だと矮小化するものは論外として、「騙された人は間抜けだ」などと一蹴するのは簡単なのですが、果たしてそうかというところを考えてみたいと思います。例えば、東海大の金某教授や、東大の姜某教授の様に、明らかに日本の言論工作と分かるものは簡単に見破れますが、「中国の民主化のために」「あなたが活躍することでアジアの発展に貢献できる」「中国は日本を見習わなければならない」などと言われたらどうでしょうか。ここが中国と他国との工作員の違いだと思います。中西輝政氏曰く「孫子以来、二千数百年に及ぶ諜報・工作の伝統」、確かにその通りです。「人を騙すのは良くないこと」や「相手の身になった考えろ」と教えられてきた日本人にとって、頭では何となく分かっても、彼らの行動パターンは中々理解しがたいものがありますね。

また、一般人にとってスパイとは「情報を盗む」、また日本側の協力者はハニートラップやお金に目が眩んで情報を売ったのかと思われがちですが、どうやらそうではないらしい。スパイ活動と工作活動の違いについても明確にしておきましょう。

一番厄介なのは「相手国の政策や世論を自国の国益に沿うようにネジ曲げる」特殊工作です。その為に「国の政策や世論形成に影響を及ぼすメディア関係者への工作」が行われています。ですが当の本人達は、「日中友好のために自ら進んでやった」という、なんとも信じられない事態になっているようです。

このあたりをポイントに抜粋しました。「日本は平和ボケだ。何で騙されるかな」と言うのは簡単ですが、もしかしたらそんな私達もコロッと騙されるかもしれない。そうならない為にも改めて考えてみたいと思います。

省略した箇所にも非常に興味深い記述がありますので、是非、WiLL8月号を入手されることをお薦めします。

また、中西輝政氏の新著『日本人として知っておきたい外交の授業』は、これからの日本を考える上でも大変参考になる本です。これもお薦めです。

※関連動画

2006年10月に行われた岡崎研究所の『日中安全保障対話』で、司会を務める李春光の映像があります。

【スパイ天国】中国大使館1等書記官、身分偽装で浸透工作か[桜H24/5/29]




月刊WiLL 2012年8月号『総力大特集 中国に反撃せよ!』

戦後最大の諜報案件「李春光」

京都大学名誉教授 中西輝政

1.「対日工作」の闇

2012年5月、警視庁公安部は在日中国大使館の一等書記官・李春光に対し、外国人登録証明書を不正更新した外国人登録法違反容疑で、出頭要請を行なった。

日を追うにつれて、筒井農水副大臣との副大臣室での李書記官との頻繁な接触、機密文書の漏洩の疑い、農産物の対中輸出促進事業とのかかわり、あるいは防衛関連企業社員との接触などが次々と報じられているが、通常、こうした事件では全貌が明らかになるまでには相当の時間がかかる。

さらに中国の諜報活動、とりわけ対日工作の規模の大きさや深さ、また李春光の人物背景など、この事件の構図を考えると全容が明らかになるのはさらに数年の年月がかかるに違いない。にもかかわらず、一ヵ月も経たないのに日本のメディアでは、「漏洩した国家機密は大したものではないようだ」とか、どんな大物スパイが暗躍したのかと思ったら「余りの“小モノ”ぶりに騒動はしぼんでしまい」(『週刊新潮』6月14日号)といった、全く能天気なムードが早くも広がっている。「嗚呼、スパイ天国日本!」、さもありなん、と慨嘆するしかない。

戦後、国内で中国のスパイ事件が摘発されたのはわずか5件。本件が6件目となる。日本は「スパイ天国」と言われて久しく、摘発件数が50件以上を数える北朝鮮や、20件に上るロシアと比べて絶対的に少ないのは、今年40周年を迎える「日中国交正常化」以来の「日中関係重視」という国の方針にあるとみていいだろう。尖閣諸島をめぐる紛争がここまで悪化したのと同様、「日中友好最重視」できたこの40年のもう一つのツケと言うしかない。

公的な立場として入国している人物をスパイ容疑で摘発すれば、「日中友好」ムードに水を差すことになる。何につけ、相手の嫌がることをすれば対中外交の基礎を揺るがしかねない、として慮ってきた結果が、この二桁に満たない摘発数に反映されていると言える。

そのような歴代政府や外務省などの「配慮」を乗り超えてまで、今回、警視庁公安部があえて出頭要請を行ったのは、「日本の現状をこのまま放置していいのか」という強い危機感ゆえではないだろうか。諸外国であれば当然の措置、つまりごく日常的なルーティン仕事を行ったにすぎないのだが、中国外交官、それも永田町に深く浸透していたハイレベルの情報工作員を事実上、「追放処分」にしたのであるから、日本にとっては戦後初の非常に多きな決断である。この検挙に踏み切った当局の勇気を称えたい。

※この事件に対するマスコミの「ケチな蓄財」との見方に関する説明がありますが省略します。

だが、この事件の「本筋」は、このケチな蓄財などではない。ここにとらわれて事件を矮小化しては、本質を見誤ることになる。

本件は、ラストボロフ事件、レフチェンコ事件と並ぶ戦後三大諜報事件の一つと考えてもいいほどの重大性を帯びている。彼の経歴、日本の政権中枢への食い込み、国策レベルにまで及んだ日本政府側のそれへの反応。それらすべてが、現在の中国による「対日工作」の闇と、他の民主主義国家では到底考えられない極端な日本の国家としての脆弱性を物語っているからである。

※李春光の経歴に関する詳しい説明がありますが省略します。

「国際交流」が合法的に秘密工作員が入ってくるパイプの一つであることは、インテリジェンスの世界を多少なりとも知っている人には常識である。かと言って、「国際交流」を押し止めるわけにはいかない。そこで多くの民主主義国家では、何らかの監視やスクリーニングを制度化しているが、もちろん、日本にはそうした問題意識すらないのが現状だ。

※中国社会科学院についての記述がありますが省略します。

だが、この中国社会科学院の正体については、6月1日付朝日新聞にこう書いてある。「人民解放軍と関係が深い機関である『中国社会科学院』」

このことはインテリジェンスの世界ではすでに知られてきたことではあるが、一般紙、ましてや朝日新聞がこのように報道したのには驚かされる。中国社会科学院と人民解放軍の関係を断定した日本の報道は、これがはじめてではないか。

社会科学院と言えば、06年に開始された悪名高き「日中歴史認識共同研究」の中国側の座長・歩平氏は、社会科学院の近代史研究所長であった。中国側の他のメンバーも、半数以上が社会科学院所属の教授である。本来、最小限の知識があれば、社会科学院のこうした実体に目が向いたはずで、この「共同歴史研究」も、人民解放軍がかかわる対日工作の一環であったことくらい容易に推察できたはずである。

にもかかわらず、「歴史を見直し未来へ向かう」(「日中歴史共同研究」報告書序文より)などといってまんまと相手の対日工作活動に乗ってしまったことそのものが、日本の学者たちはもちろんのこと、政府・外務省まで含め、日本側の「非武装平和主義」、つまり全くの無防備さをさらけ出しているといえよう。結果、どのような「研究成果」が発表されたかは言うまでもない。

※この共同歴史研究に関してはまんまと嵌められた感があります。

以下は、2010.2.2付の産経新聞、産経抄からの抜粋です。これ一つとっても大問題だと思います。


「日中歴史共同研究委員会」が公表した報告書をめぐって、きのうの各紙は、両国間の「溝の深さ」や「隔たりの大きさ」を伝えていた。(略)近現代史の部分で、日本側が歩み寄った印象が強いのが気になる。特に「南京事件」については、被害者数「30万人以上」を主張する中国側に対して、「20万人を上限として4万人、2万人」などと、「虐殺」を認めてしまった。最近では、その存在を疑う研究も出ているというのに。


以下のまとめサイトに新聞記事がアップされています。ご参照下さい。

15年戦争資料 @wiki 日中歴史共同研究

とりわけ、日中関係を扱う日本の近代史学界は多くの歴史認識において、社会科学院などの工作の影響を受けている。たとえば、決して左翼ではない有名な昭和史家なども、社会科学院の近代史研究所から「最も信頼できる日本の近代史研究者」と持ち上げられ、得々としている始末だ。

そもそも、いまの中国の体制下で政府公認のシンクタンクであれば、政府、中国共産党はもちろん、軍、公安、対日工作機関がバックについているであろうことくらいは警戒してしかるべきだ。最低限、日本や欧米のように「自由に討論し発表する」ことなど到底できるはずがないことくらいは頭に入れておくべきだ。現に、李春光も研究のために日本に来ていたわけではなかった。

※李春光に対する警視庁公安部の見立てについては省略します。

一方、李春光が接触してきた松下政経塾や政府関係者の反応はいかにもお粗末な様相を呈した。「中国外交官スパイ」のスクープは5月29日付読売新聞の一面で報じられたが、同じ日の夕刊15面の見出しにはこうある。

「彼がスパイ まさか」

松下政経塾等で接点のあった人々の談話が掲載されているが、一体、この関係者らはどんな人間であればスパイだと思うのか。

<<中略>>

記事では、松下政経塾出身者は「(李春光は)積極的な性格ですぐに溶け込み、寮の仲間と一緒によく酒を飲んでいた」「中国の民主化を支持していたし、日本と中国が将来、どう友好関係を築いていくかを真剣に考えており、両国の懸け橋になれる人だと思っていた」などと述べている。

<<中略>>

ちなみに、翌日の新聞記事でも、本件の当事者でもある筒井農水副大臣までもが「書記官と副大臣室で会ったのは一度だけ。スパイには見えなかった」と述べている。「スパイに見えるスパイ」などいるわけがない。あまりに警戒心がなさ過ぎる。

松下政経塾関係者や東大法学部の公共政策大学院と東洋文化研究所、さらには国会議員までもが、来日した中国人が申告している経歴を信じ、しかも「快活で明るい背書く」の李春光に一切、疑いの目を向けず、何の警戒心も持っていなかったことは、インテリジェンスの国際常識においては驚嘆に値するものと言えよう。

中国スパイの三つの原則

アメリカFBIで長年、中国による対米工作の監視を担当し、中国の諜報活動に非常に詳しいポール・ムーアは『中国スパイ秘録』(デイヴィッド・ワイズ著、原書房刊)で、中国のスパイの活動の特徴は三つの原則によって動かされていると述べている。

第一は、情報提供の見返りに決してお金を渡さず、相手を信じさせ、自発的に協力するような「コネ」を作って情報収集する。第二は、中国の諜報はウォークイン(飛び込み)の情報は相手にせず、非常に新潮かつ忍耐強く動く。第三は、中国の諜報機関は賭け事やアル中、ひねくれ者は相手にせず、むしろごく善良で健全な人間を工作対象に選ぶという。

当然ながら、善良な人が一番信頼できるし、発覚しにくい。加えて中国によるスパイ行為、工作に協力することそれ自体が素晴らしいこと、正しいことと思い込ませる。日本に対してなら、その殺し文句は「日中友好」であろう。それゆえ、これと思う対象にはあえて堂々と正面から近づき、一切、後ろ暗い接近の仕方はしないとされる。

特に三つめの条件は、まさに李春光にあてはまる。中国超局は、ロシアや北朝鮮のような強引で利益供与の陰がちらつくスパイではなく、李春光を知る人の多くが発覚後も彼に好意的で「まさかスパイだとは」と思っているような人物を使ったのである。

中国のスパイ・リクルーターは、相手国のなかで使用する工作員や情報提供者に対し、「あなたが活躍することで、中国の近代化(あるいは日中の平和、アジアの発展)に貢献できる。あなたはその重要な役割を担っている」と刷り込んでいるという。

実際、中国の兆候活動に協力して処罰された人は、あとで振り返っても「平和のため」に自ら進んでやったまでで、一切、後悔はないということが多い。あるいは、諜報活動に加担していたという自覚もないことさえある。松下政経塾関係者はもちろん、農水関係者もまさか自分が工作対象になり、中国の諜報活動に加担していた、あるいはその可能性があったとは思ってもみなかったはずだ。

<<中略>>

今回のように、霞ヶ関でも永田町でも表玄関から堂々と工作対象に会えば、お人好しの日本人は、まさかそれが「工作」の一環だとは思わないだろう。

しかし中国では、孫子以来、二千数百年に及ぶ諜報・工作の伝統があり、それは中国文明の本質にすらなっていると言っていい。人を疑うことを知らず、実体が明らかになっても「まさか、あんなにいい人が」などと口にする無防備な日本人が中国に対処するのは、至難の業である。

「民主化」や「日中友好」なのどの言葉にも騙されてはいけない。特に日本の保守陣営の人々は、中国人の「中国よりも日本の方が文化程度が高い」「中国は日本を見習わなければならない」という声に弱いが、これこそが彼らが日本人を籠絡する常套句なのである。

これは戦前からの中国の日本人工作におけるいわば十八番であり、孫文が「日本人に、いまこそ大東亜の理想を日本が先頭に立って果たすべき、と言えば、練達の(犬養毅のような)人物でもどんどん資金を出す」と言っていたことを忘れてはならない。廖承志郭沫若孫平化らも、単なる友好的文化人と考えてはならない。

現在であれば、「中国の民主化」や「共産党に批判的」、あるいは日本の保守派と歩調を合わせるかのような言動よりも、長期的にその言動や経歴を重視し、付き合いを考えるべきだろう。

2.李春光の実体と日本の甘さ

さらに報道から、李春光の実体と諜報に関するに本の甘さを分析していこう。6月1日付朝日新聞には、こう書かれている。

「国家機密に触れるスパイ活動の有無について、公安部はコメントを差し控えるといっているが、外交官の立場を超えた違法な情報収集があったのか、疑問である」

いまの段階で公安部が手の内をさらせないのはインテリジェンスの常識のはずだが、そのことを知ってか知らずか、なぜか早々と「疑問」を提起する意図は奈辺にあるのか、それこそ疑問と言わざるを得ない。

さらに、わかり切ったことであるが、窃盗や盗聴など別の法規に触れるものを除けば、日本において外国人の「違法な情報収集活動」を処罰する法制そのものが存在しない。スパイ防止法がないからである。つまり、日本では違法な情報活動はあり得ないのである。自家撞着と言ってもよい、こうした論評がなされる背景には一体、何があるのだろう。

現在、日本に存在している情報関係の法規は次の三つである。

①国家公務員法百条、守秘義務→懲役一年以下の処罰、50万円以上の罰金(ただし諜報処罰法規ではなく、個人情報漏洩等)。

②自衛隊法→軍事装備品、作戦計画などの防衛秘密漏洩に対し、5年以下の懲役。

③日米相互防衛援助協定→特別防衛秘密漏洩に対し、最大10年以下の懲役。

しかし、これらは一般公務員、自衛隊員など特別な身分の人間にのみ課せられるものであり、一般人はおろか、政府高官らにも「機密漏洩」の罰則はないのである。

そのため、李春光に文書を渡したと見られている筒井副大臣の秘密漏洩行為も、農水省の職員が行っていた場合は国家公務員法違反にあたるが、政治家である副大臣には罰則はなく、「大臣規範」に違反するのみである。

『週刊ポスト』(6月15日号)の当該記事の次の記述からも、こうした現代日本の“大いなる誤解”が見て取れる。

「この事件には奇妙な点が多い。まず『スパイ事件』と報じられているものの、どんな国家機密が漏洩したかがはっきりしないことだ。(中略)書記官が人民解放軍総参謀部所属のスパイだとすれば、当然、軍事情報の収集が任務のはずだ

まず指摘すべきは、日本以外の先進民主主義国では身分を偽装した外国の特殊機関の要員が自国の政府要人に接触したことそれ自体をもって、ただちに違法な秘密工作とみなされる。もちろん、法的にも処罰対象になりうるし、当該の高官は警告措置が取られるのが普通である。その場合、たとえば筒井副大臣から李春光に渡った文書の機密レベルは問題にならない。それ以前の問題なのである。

そもそも、一人の外国工作員がどれだけ自国の国家機密に触れ、どのような工作を行ったかについては、本人が出廷する場合にしか明らかにならないだろう。

そして後段にも大きな間違いがある。人民解放軍総参謀部所属であるからと言って、軍事情報の収集が当然の任務とは限らない。李春光は経歴を見る限り、おそらく一度も正式の軍務についたことはないだろう。彼の任務はあくまでも「対日工作」であり、永田町つまり「日本の政策決定過程への侵入、影響力の行使」が彼の専門とする業務なのである。

軍関係者だから軍事情報のみに狙いを定めているはずだというのは、自国のシステムを相手国に投影する単なる思い込みに過ぎず、その思い込みが李春光の工作活動をより容易にしていたのではないか。彼のような経歴の工作員は、むしろ絶対に軍事情報には直接かかわろうとはしないはずだ。危険なだけでなく、そもそも専門ではないからだ。ところが、上掲の『ポスト』記事は自衛隊OBで有名な軍事評論家が「軍事機密を狙う大物スパイであれば、有益な軍事情報を引っ張ろうと画策したはず。しかしもっぱら経済や商売の話をしていた」とコメントし、李春光が「違法な小遣い稼ぎをした小物外交官」ではないか、と印象付ける形で締めくくられている。

だが、彼ほどのエリート工作員であれば、そうした発覚リスクの高い軍事分野で、自らが積極的に最前線に立って直接情報収集に動くのではなく、いわゆるエージェントスポッター的な働きをしていたとみるほうが妥当だろう。エージェントスポッターとは、目を付けて接近すべきターゲットの人材情報のみを発掘・収集し、人脈を形成し、中国側の別の人間に橋渡しをする工作員のこと。李春光はそうした「対日工作コーディネーター」だったのではないか、と考えられる。

これらの日本のマスコミの反応は、インテリジェンス・リテラシー(諜報問題への基礎的な知識や見解)の驚くべき欠如を示していると言うしかない。専ら公開情報から国際政治イシューとしてのインテリジェンスの研究をしている私の目から見ても、これは「非武装中立」を唱える平和主義者と同じくらい驚くべき「お人よし」であり、世界の諜報活動の現実に対する大変危うい無知をさらけ出していると言っていい。

※前原政調会長や玄葉外務大臣の発言の危うさ、間抜けっぷりについての記述がありますが省略します。

3.「スパイ活動」と「工作活動」

だが、これまで見てきた報道や政府首脳の発言が物語っているように、政府関係者も新聞記者も、単なる「スパイ活動」と、いわゆる「工作活動」の違いが十分に分かっていないのではないだろうか。

抗議の諜報活動は、ふつう次の四つに大きく分けられる。

①書類を入手する、盗聴や暗号解読などの情報収集、つまり狭義の「諜報活動」。

②こちら側からの情報漏洩、相手の工作活動等を防ぐ「防諜活動」。

③「宣伝」、歩賄お・プロパガンダおよびグレイあるいはブラック・プロパガンダ(秘密宣伝、虚偽情報の散布など)

④「秘密工作」、アメリカでは「コバート・オペレーション」、旧ソ連では「積極工作」と称したもので、情報収集が目的ではなく、特に相手国の政策や世論を自国の国益に沿うようにネジ曲げる特殊工作のこと。

今回、李春光が行っていたいのは、このうち④がメインだったとみていいだろう。①に当たる日本政府の機密文書を入手できたのは、日本側の警戒心のなさによる「偶然の産物」であろう。

長年、「スパイ天国」の名を恣にしてきた日本に対しては、もはやどの国も、一部の先端技術を除いては、大きな努力を払ってまで盗むに値する需要情報はさして多くはないと思っている。新聞の「今日の総理の動静」欄でわかるように、もはや国の体制自体が全て「つつ抜け国家」となっているからだ。

今日、日本にとっての最大の脅威は、国の政策形成それ自体、そして日本の世論に対して秘密裏に加えられる外国からの介入や影響力の行使なのである。それは、日本の国家主権や民主主義に対する重大な侵害であり、領土問題や防衛問題よりも、潜在的には遙かに根源的で恐ろしい脅威と言える。多くの民主主義国では、この脅威に対して最も大きな関心を払い、すでに長年にわたり、民主社会の原則や価値観と両立する防止体制を必死で構築してきたことを我々は知らねばならない。

李春光は、すでに大使館勤務前から、善良な中国人学者、あるいは研究者として、日本の政治家や学者など、日本の政策決定にかかわる人物に接触し、議論する、あるいは「意見交換」をするという形で、国の政策や世論形成に影響を及ぼすメディア関係者への工作を行っていたと考えられる。

※唐家センと橋下の友好ぶり、王家瑞と小沢や創価の池田との関係についての説明がありますが省略。

4.解き明かされた李春光の目的

現在、世界中で対中関係においては急速に増強される核戦力、海洋進出、尖閣をはじめとする各国との領土問題、経済問題など、様々な点で中国の脅威が指摘されているが、これらよりも我々にとって遙かに危機的な状況が、日本に対する政治工作の現状なのである。

繰り返すが、民主主義国家において何よりも大事なのは「世論形成」である。李春光のような身分を偽った秘密工作員が、政治家のみならず学者や評論家、マスコミに接触することで、意図的に日本の世論に影響を及ぼすことができる。本来、日本が採るべき国策は、日本人自身の自発的な議論のなかで決定していくべきものである。国民が国家のために下すべき判断が、外国の国益によって歪められ、捻じ曲げられることはあってはならない。

だが時すでに遅し、と言えるかもしれない。李春光の目的を解き明かすことで、驚愕の実体が浮かび上がるのである。

李春光は筒井副大臣に頻繁に接触し、機密文書まで手に入れていたとされるが、これは日本の農水産品の対中輸出促進事業に関するものだった。

一般社団法人「農林水産物等中国輸出促進協議会」が中国への農産物輸出の足がかりとして、まずは北京の施設で農産物の展示、販売を行う計画があった。筒井農水副大臣は自ら訪中するなどして、これを主導。ここに、李春光の工作の影響が見て取れる。

読売新聞によれば、この事業の構想は筒井副大臣らによって発足された民主党内の勉強会で浮上したというが、この発足の背景には、李春光から民主党関係者への働きかけがあったという。李は五回の勉強会のうち少なくとも二回出席し、「中国の企業と提携したほうがいい」とアドバイスし、提携先の企業を紹介していた。

政権与党の政策決定過程への浸透としてこれだけでも驚くが、李春光の「高級工作員」という立場を考えれば、これらの働きは単なる日中間の商売という話に留まるものではない。6月1日付の日経新聞が報じている「アメリカ政府関係者の談話」が、この事件の背景に大きさを物語っている。

「2010年夏頃から、(李)書記官の主導していた農産物の対中輸出事業が、中国の大きな外交戦略の実現を目指した戦術の一つだと我々は見ていた」

在京のアメリカ大使館関係者は、おそらくはインテリジェンス関係者と見てよい。もちろん、アメリカは日本の主権下で公に諜報活動ができないが、そのなかでも、アメリカの情報当局は東京での李春光の動きに注目していたのである。

なぜアメリカが彼に興味を持ったかと言えば、彼のかかわっていた日本の農産品輸出の動きが、日本のTPP参加の決定に影響を及ぼすのではないかと考えたからであろう。

<<中略>>

やはり、李春光の狙いは単なる日中間の農作物の貿易ではなく、TPPや日中間FTAといった大きな国家レベルでの日本の政策決定にかかわるものだったと断言していい。「ケチなスパイ外交官」という話で終わらせることが、いかに危ういことかわかるだろう。

現に、李春光と接触していた筒井農水副大臣は、北京での「日本産農水産物展示」に不自然なほど深入りしている。昨年12月の野田総理の訪中の日程にも、展示館の視察を総理への「直訴」によってねじ込んでいる。しかも、これについては永田町、霞ヶ関で「野田総理訪中をめぐって起きた官邸内の内部紛争」と題する怪文書まで出回る騒ぎとなった。

※筒井副大臣の答弁や怪文書に関してまとめてありますのでご覧下さい。

4月4日の参議院予算委員会・西田昌司議員

3月19日の参議院予算委員会・西田昌司議員

そして今年5月、日中韓サミットが北京で開催され、遅れるTPP参加交渉を尻目に、日中韓FTA交渉の年内開始で合意が交わされた。昨年11月に日本がTPP参加交渉開始を明言して以降、中国の「眼の色は変わった」という。

対アメリカを睨み、どんな手を使ってでも日本を中国陣営へ引き込もうとする中国の思惑とその結実が、李春光(おそらく彼よりもハイレベルの工作員が多数いたと思われる)と日本政府の動きから垣間見えるのである。

「円と元との直接取引」の衝撃

そのことを踏まえて日中関係を大きく眺めてみると、もうひとつの「点」が見えてくる。

それは、先にも触れた昨年12月の野田総理の訪中の際、まさに筒井副大臣が強引に野田首相の展示会視察の一定を組み込んだのと全く同時期に、日中首脳間で合意された中国政府との二つの約束である。

一つは、中国国債の直接買い入れの合意である。日本は、これまでアメリカ国債を購入してきたかなりの部分の資金で中国国債を買うことに合意したのだ。これはアメリカやその他のアジア諸国から見て、日本が人民元を最重視し、「ドル外し」に軸足を移しはじめた、と見られても仕方がないだろう。

もう一つは、急浮上した「円と人民元の直接取引」の開始合意である。この12月の突然の合意を踏まえて、世間が「中国人スパイ事件」に沸いていた6月1日、突如として報じられた「円と元の直接取引開始」のニュースである。

昨年12月の合意から実行までが僅か半年と、こうした分野では脅威のスピードである。なぜこのような合意を交わし、その後、ほとんど議論されることもないままに早々に直接取引が開始されることになったのか。

日中の取引においてはこれまではドルを介して取引をしていたため、年間30億ドルもの手数料がかかっていた。その節約にはなることはたしかであり、また人民元の外貨規制、交換規制を少しでも減らしていくためには、たしかに実務上のメリットがあると言えなくもない。

だが、ドルを除く主要外国通貨と人民元の直接取引が本格化するのははじめてであり、日米中関係の大きな趨勢から見ると、この実施は非常に大きな問題を孕んでいる。

その問題とは、国際的にこの直接取引開始が与える印象が、まさに日本が「ドル外し」「アメリカ外し」に動き、「人民元経済圏」に自ら歩を進めるという意思表示と取られかねない、ということである。

特に、中国と紛争を抱えるアジア諸国はどう見るだろうか。相当なショックを覚えたに違いない。「日本はアメリカを捨てて中国の勢力圏に入る」と見るのではないだろうか。これは、TPPやFTA以上に、各国に衝撃を与えたに違いない。

「ドルから人民元」というこれら二つの大きな合意は、日本の存立を支える「命綱」としての日米同盟、日米安保体制を含む日米関係の大きな文脈と整合性がとれるものではない。ましてや昨年、オバマ大統領は米世界戦略におけるアジア太平洋地域の最重視、という新路線を打ち出し、中国との対決姿勢を明確にしている。

この状況下で、日本はあたかも「中国経済圏」に入るかのような姿勢を見せるのは、国策として少なく言って支離滅裂である。国政の場でほとんど議論されず、これほど重大な国策があっという間に動き出した背景に一体、何があるのか。

グローバルエコノミーの時代には通商交渉、金融交渉においても徹底した情報、工作戦が展開されている。日本はかねてより諜報戦、情報戦では常に敗北していると指摘されてきたが、李春光事件を追うことで、政権中枢にまで食い込まれる工作活動を許していた実体が明瞭に見えてくる。

この現状を放置すれば、一体どれほどの国益を失うことになるのか、想像を絶するものがある。




この問題を考えると必ず「スパイ防止法」という壁にぶつかると思います。そこで諦めるのは簡単なのですが、そんな時、長い間、拉致問題とかかわってきた荒木和博さんのポジティブな考え方を見習うべきだと思います。

米国も昔から中国には随分とやられている。FBIの捜査官も抱き込まれたり結構あって、米国でもそんなもんなんだと。米国も法律上はそんなに簡単に捕まえられなくて、機密漏洩していてもそんなに簡単には立件出来ない。日本にはスパイ防止法がないから駄目だ、情報が筒抜けだと言うのは――勿論、そういう部分はあることは事実だが――何処の国でも筒抜けな部分はあって、日本だけが悲観して、駄目だ駄目だと思い込むこと自体にかえって問題があるんじゃないか。互いに筒抜けだし、互いに穴も開いている、そういう状態の中でどうするか考えていけばそんなに悲観する必要はないんじゃないか。

元々、憲法の前文を守るのであれば自衛隊は憲法違反だし、在日米軍もいてはいけない。周りの国を信じてやっていく訳ですから。最初から守ってない。最初から破綻している。破綻しているならそういうものだと思ってやれば、別に今の憲法があろうがなかろうがどうにでもなると思う。変な風に拘って「出来ない出来ない」と――これも一つのプロパガンダ、一つの戦争だと思う――それを乗り越える時には来ていると思う。

拉致問題にしても、実際にはどうやって取り返すか。まったく法的なことを気にしないでプランを立ててみれば、金で解決する裏交渉もあるし、自衛隊を使って取り返す方法もあるし、今できる範囲でと考えると物凄く狭くなる。まずはそういう範囲を取っ払って、取り返してくる為には何をすればいいかと考えると、方法はいくつもある。自衛隊を使って取り返すというのも、最初から「それは出来ない」と言えば何も検討出来ない。実際には様々な方法が考えられる。そういう手は考えていけば幾らでもある。北朝鮮に限らず、対中、対米であろうが、もう一度、ゼロベースにして考えてみることで、実はこの国の未来がかなり開けるんじゃないか。

北朝鮮に拉致されている人からすれば、「法律が駄目だから助けに行けません」は言い訳にならない。逆に言えば「理屈は後から貨車で付いてくる」ってやつです。

【荒木和博】北朝鮮は怖くない[桜H24/5/22]

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